中国では、マフィアなど反社会組織のことを「黒社会」と呼びます。
黒社会は、あなたが思いつく限りの悪いこと、違法なことをしている存在です。
日本を始め、世界に広がるチャイニーズマフィア。
日本では、蛇頭や三合会が有名です。
マカオにはどのような組織があり、彼らはどのような歴史を歩んできたのでしょうか。
マカオの黒社会について紹介します。
マカオの2大マフィア
現在マカオで有名な黒社会は、水房と14Kという2つの組織です。
水房
水房はマカオ土着のグループで、行商や漁業に加え、カジノや風俗で莫大な利益を上げてきました。
1990年代前半、絶大な勢力を誇った組織です。
しかし90年代後半に勃発したカジノ戦争では、新興の14Kに押され気味となりました。
14K
14Kは、香港を中心とした巨大世界犯罪組織ネットワーク、三合会を構成するグループの1つです。
三合会は、香港地下鉄MRT元朗駅での白シャツ集団による、一般人襲撃事件への関与が噂されています。
14Kは第二次世界大戦末期、中国から追い出されかけていた蒋介石率いる国民党によって生まれました。
1949年に、広州で紅幫(ほんぱん)と呼ばれる黒社会を集めて作った、秘密結社です。
当時彼らの目的は、金品略奪と中国共産党へのテロを実行することでした。
1960年代には、台湾政府から14Kへ多額の資金提供がなされたと言われています。
米財務省は14Kを「世界最大規模の中国系組織犯罪集団」と形容しており、麻薬密輸や違法賭博、恐喝、人身売買など、様々な犯罪行為を行っていると指摘しています。
三合会および14Kは秘密結社の性質が色濃く、詳しいことは語られませんが、儀式的なものの多さや、一度組織に入ったらそのまま一生所属することなどが噂されています。
カジノ利権の奪い合いと混乱期
マカオには元々ポルトガル系の黒社会がありました。
しかし1960年代にカジノ産業が発展するとともに、香港のマフィアなどがマカオに入り込みます。
マカオ最大の勢力だった水房が、14Kの力を借りて勢力維持を図ったため、縄張りに異変が生まれました。
ポルトガル系の黒社会は急激に弱体化し、そこに14Kが入り込んできた形です。
水房は、気に入らない相手がいると、どのような手段を用いて排除していたと思いますか?
警察に手を回して、逮捕させていたんです。
私は警察と反社会組織がズブズブなことに大変驚いたのですが、マカオ人に言わせるとそんなのは当たり前、当然のことだそうです。
そしてこの方法は、歴史ある定番の手段であり、血が流れないため比較的穏便だと言います。
そんな中、98年に水房が東南アジアで殺し屋を雇い、14Kの幹部を何人も暗殺しました。
ここから報復が始まり、血で血を洗う抗争が幕を開けます。
そこにお金などの内輪揉めが絡み、次第に誰が敵か味方かわからない、殺伐とした泥沼の時代が訪れました。
警察署長爆弾テロ事件
中国返還前、治安は悪く、日常的に街中で銃撃戦が行われるような状態でした。
水房と警察の密接な関係から、14Kは警察や政府関係者を狙うようになります。
カジノ監察官や警察などの公務員は、1997~1999年の間に20人以上が暗殺されたり、爆弾テロ等の被害を受けました。
爆弾テロは、98〜99年の2年間で、20件以上発生しています。
1998年5月、ついに警察署長を狙った爆弾テロが起こりました。
この事件により、さすがに看過できなくなった警察は、14K幹部である歯カケの駒さんと4人の手下を同年10月に逮捕。
駒さんは、犯罪教唆、計画殺人、麻薬の密売、偽造パスポート、不法入国の手引きや雇用、反社会的勢力の構成員という6つの容疑で起訴されました。
通常だったら数か月で起訴されるところですが、報復を恐れたマカオ警察は中国返還を待ち、彼の処遇を中国政府に委ねました。
世界に羽ばたく黒社会
97年の香港返還、99年のマカオ返還に伴い、中共による支配を嫌って国外へ脱出した三合会などの黒社会幹部も多くいました。
彼らはヨーロッパやアメリカ・カナダ、オーストラリアなど世界中に拠点を作り、薬物取引ネットワークを強化しました。
歯欠けの駒さんは2012年に出所した後、チャイニーズフリーメーソンと呼ばれる洪門の活動を精力的に行っています。
洪門は、三合会と関わりの深い、中共政府寄りの秘密結社です。
駒さんは、ミャンマーの政府関係者に接触し、巨大なカジノを作ったりと、新興国家へ市場開拓を進めています。
しかし2020年末、アメリカの腐敗対策の一環で、駒さんは米国務省の制裁対象に指定されました。
これにより、駒さんが米国内に保有する資産はすべて凍結。
米国人は、駒さんと取引できなくなりました。
日本版カジノにも名乗りを上げた、サンシティグループのアルビン・チャウ会長は、14Kの元幹部だったことで知られています。
サンシティグループは、ギャラクシーカジノのジャンケット(カジノVIPのお世話係)プロモーターの他、マカオGPのスポンサー、映画の製作配給や香港スターのコンサートのプロモーターとして、エンターテイメント界でも力を持った会社です。
ちなみにアルビン・チャウ会長自身も監督として映画を撮っています。
香港の黒社会幹部は、新義安の幹部も映画監督として活躍していたりします。
サンシティグループの配給映画は、黒社会を舞台にした香港ノワールと呼ばれる、ハードボイルドものが多いです。
一種のプロパガンダでしょうか。
映画を見て、黒社会に憧れる少年たちがいるかもしれません。
コンサートは、香港四大天王と言われるアンディ・ラウやジャッキー・チュン、アーロン・クォックなど、香港エンタメ界のまさにど真ん中の興行を掌握していることからも、影響力の大きさが伺えます。
サンシティグループは、マカオのほかにフィリピン、カンボジア、ベトナムやロシアにも拠点を持っています。
チャウ会長は、マネーロンダリングの嫌疑でオーストラリアに入国ビザの発行を拒否されています。
黒社会は一枚岩ではない
同一組織内でも色々な派閥がある、中国マフィアこと黒社会。
複雑で秘密めいた犯罪組織の実像は、闇に包まれています。
気になる方は、香港映画などを見ると、彼らの考え方や恐ろしさを追体験することができるので、ぜひ観てみてください。
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